日曜日の夕方のニュースで子供向けの「起業家養成塾」というものを紹介していた。事件などのニュースを一通り伝えた後の「特集」などと呼ばれるコーナーでのことである。その塾というのは幼児を対象に週に1コマ75分の授業を施しているらしい。講義の内容は、おやつを題材に「どんなおやつが好きか?」などのアンケート分析を通したマーケティングやチラシをデザインさせて、広告の基礎などを教えていた。一クラス五、六人の生徒で行われているが、子供達は一様に「たのしい!」と答えている。親にしてみれば、「自分で考える力が身に付く」、「(企業家精神は)人生のあらゆるところで役立つ」とインタビューに答えている。本当に起業家にしたいのかどうかはあいにく分からなかった。

 その後、「一方、リストラの危機にさらされるサラリーマンはこのことをどう思うか?」ということで、街のサラリーマンにインタビューしていた。ただ、単なるサラリーマン代表としてコメントを求められたから応じただけなのに「リストラの危機にさらされる」とキャプションが付くと、その人がリストラの危機にさらされているかの様にも見えてしまう。なんと失礼なことだろう。おまけに起業家のリスクはリストラの比ではないはずだ。インタビューの中身は肯定的な意見が多かったが、一人だけ、「子供には分からないでしょう」と答えている人がいた。私もそう思う。所詮は「ごっこ」でしかないと。たかだか5歳児にマーケティングなどが分かるはずはない。

 この塾を主催している会社の代表者は「そのうちに大企業中心や偏差値偏重の時代は終わる」と話していた。それはある意味では正しいと思う。確かにマイクロソフトやソニーもベンチャー企業であった。しかし、もはやこれらに就職する人も「ベンチャー企業」と言いながらも「大企業」であることを理由に就職しているはずだ。また、塾に通って英才教育をするのがこれまでの偏差値教育とどう違うのだろうか?。起業家精神というのは幼児期から塾で習うものだろうか?。結局のところ、ベンチャーのこの会社だけ儲かっていく仕組みのようだ。コーナーの締めは「この中から未来のビルゲイツは生まれるのでしょうか?」と結んでいた。このディレクターはビルゲイツがどのような幼児期を送ったかを知らないらしい。偏差値偏重教育でテレビ局に就職した人がこのような取材をしてもどこか中途半端でリアル感がない。