アメリカは私にとって、大変摩訶不思議な国である。何かにつけて訴訟を起こすのは、まあ許そう。それが正当なものなら。しかし、電子レンジでペットを乾かしておいて(それも、もちろんおかしいが)、「注意書に『ペットを入れてはいけない』と書いていなかった」からと言って、訴訟を起こすのはやはりおかしい。ファーストフードのドライブスルーでコーヒーを買って、それを股に挟み運転していたらコーヒーをこぼして火傷をしたという話も聞いた。もちろん、その客は訴訟を起こして、自分がこぼしたことはさておき、「渡されたコーヒーがいつもより熱かったので火傷をした」と店側の過失を追求している。それでいて、原告側が勝訴してしまう。裁判所はそのコーヒーが本当にいつもより熱かったのか、どうやって認定したのだろう。まとめて、おバカとしか言いようがない。バカバカしいと笑ってしまうのは簡単なことであるが、彼らの思考が恐くなることもある。

 もっとも顕著な例はタバコの訴訟だと思う。愛煙家が「自らの健康を侵された」とタバコ会社を訴えている。こんな例でも訴えられた側は負けてしまったり、金を払って解決しようとする。拳銃を作っている会社も銃の被害者などから訴えられている。運転手が悪くても事故を起こせば、自動車メーカーを訴えるような話だ。きっと、自動車メーカーも訴えられていることだろう。メーカーは恐々として本来必要のない言い訳のための注意書をこさえたり、クレーマー対策を行わなければならなくなる。そして、最終的にそれは消費者が高い買い物をさせられることに帰結する。アメリカで任天堂はゲーム機のコントローラーを激しく動かし、手を負傷する子供が続出したために、手袋を無償で配布するはめに至った。

 説明書を読むと様々な注意書が書かれている。「小児用バファリン」、「服用後は眠くなることがありますので自動車等の運転はおやめ下さい」。小児用であるが、確かに、間に合わせで子供の薬を飲むことがあるので、まあ許そう。パソコンのキーボードにもメーカーが自らの責任を回避するように、長時間の使用を禁じるようなことが、いろいろと言い訳がましく書かれている。ここで当コラムも何らかの注意書を示しておかないと危ないかもしれない。そこで、当コラムの注意書きを考えた。「バックナンバーをパソコンで一気に読むと目が疲れますので、本を買ってそれを読みましょう」。そして、本にもきちんと、「電車の中でニヤニヤ笑って読んでいると怪しまれますので、注意して下さい」と、書くことにしよう。