会社によくテレセールスの電話がかかってくる。先日も「マンション投資での節税と貯蓄の話です」という電話であった。「節税と言っても『住宅取得控除』で所得税は全額還付されてます」と言っても、「住民税の還付の方法もあります」と熱心なので、通常なら電話をすぐ切ることにしているが、とりあえず今回は会って話を聞くことにした。本当のところは金儲けよりも、そのセールスマンがどのようなセールスを行うのかに興味があった。先方は有力見込みだと思ったのか、当日の朝にも約束の確認をしてくるほどの熱心さであった。

 金儲けのカラクリとはざっとこうである。まず、マンションをローンで買い、それを他人に賃貸する。月々のローン返済は家賃収入とほど同じ程度であるため、家賃収入をそのまま返済に充てる。これで自分の持ち出しはなく、最終的にはそのマンションが手に入る。これが貯蓄の側面である。一方、家賃収入を得るには経費が必要となる。マンションの管理費やローンの利息、減価償却費、取得費用や固定資産税も経費になる。これにより数字上は家賃収入よりも100~200万円の赤字を出すことが可能らしい。これらを確定申告すれば、仮に500万円の課税対象の人も、そのうちから赤字分の200万円が控除され、課税対象は300万円となり、差額の取得税と住民税が返って来るというものだ。

 それでざっくり年間に30万円程度の節税と20万円の貯蓄が可能となるらしい。ところが、である。私の場合、『住宅取得控除』のため所得税の納税額は0円のため、それほどの節税の恩恵はない。せめてプラス数万円ぐらいだろうか。それよりも気になるのはローンの方である。1,700万円の中古マンションを30年ローンで買え、と言う。節税と貯蓄と言いながらも実際に手にできる金は税金の戻り部分だけである。この計画を10年やるとして手にした儲けは300万円である。10年後にマンションを売るとして、評価額が300万円以上、下がっていたら最終的には赤字である。貯蓄の数字が見掛け上たまっていても何の意味もない。独身者向けの物件のため、売り惜しんでも自分で住むことは困難である。30万円ずつの収入を得続けられるかもどうも怪しい。経費として控除されると言っても実際にお金がかかる部分もある。

 相手の望みを断ち切るトークはこうである。「こんな御時世ですから、お互いの会社が今後どうなるかは分かりません。高々年間30万円の収入のために30年ものローンを抱えるのは心理的に絶えられない」と伝えてお引取り願った。