第1話 ■電車がないということ

 長い間そのような状態におかれて、外からの情報がないとなると別に変に感じることではないのだが、今になって思えば、中学生や高校生の頃に電車がないというのは、かなり致命的なハンディキャップである。別に沖縄に生まれ育って電車が全くないわけではないが、日常的に電車に乗る習慣がなかった。通勤は自家用車、通学は自転車となる。もちろん、バスやバイクを使う人もいるが。

 何が致命的かというと、デートのための交通手段がないことである。待合せの場所に二人は自転車で現れる。「ハチ公」前に自転車で現れるようなものだ。しかも、坊主頭に三つ組み、または、オカッパ。けど不良は聖子ちゃんカットだったりする。そのまま自転車でどこに行くというのか。それよりも街が狭いので、必ず誰かに見つかってしまう。グループ交際ともなると、何台もの自転車が連なっての大移動になってしまう。この場合だいたいの目的地はボーリング場なのだが、それも街には1つしかなかった。