第1064話 ■古きものの価値

 コンピュータは新しければ新しいほど価値が高く、中古市場で古いながらも高値が付いているのは余程プレミアが付くに値する極限られたものでしかない。いずれコンピュータにも骨董的価値が見出されるようになった場合はどうだか分からないが、現状はこうである。自動車もまあこれに近い。新しい車の方が市場価値は高い。ただ、限定で生産台数が極めて少ないものや良い状態で現存する名車と言われるものはその価値を維持しているが。

 そこで楽器の話である。ピアノとかヴァイオリンの話はよく知らないが、ギターとさほど同じ傾向にあるのではなかろうか?。但しエレキギターに限ってはその歴史はわずか50数年でしかない。既に技術的な要素はほぼ飽和状態になっていて、50年以上のものであっても、手入れさえちゃんとできていればそのまま使用できる。いずれ時間が経って、コンピュータがそのような時間スケールに当てはまるようになったとしても、50年前の機械を違和感なく使用できることなどあり得ない。

 古いエレキギターは中古市場で高値である。50年程前のものが200万円なんてのも結構ある。別に有名なギタリストが所有していたわけでもなく、ボディは傷だらけ、塗装が剥げていようとも、それだけの値段が付く。逆に補修されていたり、パーツが別のものに交換されているとその価値は激減する。

 論理的には古いものほど音が良いと言われている。その理由は、当時は手作りで、木材選びにしても良い物から使用していた。長年使用している間に木材も乾燥した、などである。確かに良い材料から先に使用して、それがなくなったら次の良いやつ、というのは良く分かる。ついでに言うと、塗装も木の振動が十分に生きるように手間を掛けて薄く塗られている。最近は大量生産でこうはいかない。

 私の所有しているエレキギターも古いものは20年経った。このままあと、20年、30年放置されば私のギターもオールドギターとなるのだろうか?。まあ、既に大量生産品だからそれほど価値はないかもしれないが、同じくらいの値段だったら、今のものよりも昔のものの方が良い音がするはず?。そう信じ、大事にしまっている。いずれ、孫が弾いているかもしれない。おじいちゃんのエレキギター。しまっているぐらいなら、使うべきなのはよく分かっているが、なかなかそれが難しい。

(秀)