第1139話 ■ジャンプ

 今日は仕事帰りに映画を見て帰った。終業後、ダッシュで会社を抜け出し、新宿へと向かう。会社から目的の映画館までは30分弱を要する。前回、会社帰りに映画を見たのは「ホテル・ヴィーナス」だった。そのことをコラムに書かなかったのは、まあ、そういうわけで、賢明な読者の方は察して欲しい。

 けど、今日は書くよ。見た映画のタイトルは「ジャンプ」。邦画である。原田泰造の映画初主演作品だ。だから見たかったわけではなく、たまたまこの原作本を読んだために映画を見たくなった。逆に、この原作本を手にしたきっかけは、その本の帯に書かれていた「映画化決定」というコピーだった。偶然このコピーを目にし、本を買って読んだからには映画を見ないことには、この偶然が完結しないような気がしていた。

 三谷(原田泰造)が彼女、南雲みはる(笛木優子)の部屋を訪ねた夜、彼女がコンビニにリンゴを買いに行ったまま、忽然と姿を消し、音信を断ってしまう。彼女がその夜、コンビニから戻れなかった理由はある偶然によるものだったが、そこにさらなる偶然が重なり、しかし、ある時点で彼女は自らの意志で失踪することになる。全国で失踪する人は警察が分かっている範囲だけでも年間10万人にも上るらしい。

 まさにこの映画のキーワードは偶然である。「もしも、あの日の翌日、出張に遅れても彼女の帰りを待っていたら?」。そんな思いが彼にあり、三谷は彼女を探すが彼女には一向にたどり着かない。そしてストーリーは最後に全ての伏線がまとまり、謎が解ける。この氷解具合が実に心地良い。あなたにも、そんな「もしも」があるだろうか?。特に恋愛において。それで人生、変わっていただろうか?。

 マイナーな邦画であるため、おそらく全国的に放映されることはないだろう。下手すると、ビデオになることもなく、衛星放送などで流れることもないかもしれない。だから多少遠くても見に行かなくはいけない。最近の映画館は椅子が良い(もちろん、例外はある)。まず、クッションが良いし、サイズもゆったりしている。そして、腕載せの部分にはドリンクホルダーが付いている。映画の前の予告編を見ながら、次は何を見ようかな?、と考えたりする。こんな寄り道を習慣化するのも悪くない。

(秀)