第1219話 ■電車男

 映画「電車男」を見た。気楽に笑える娯楽映画だ。原作についてはここで書くまでもなかろう。2ちゃんねるの書き込みが元になっている。電車男がその日のエルメスさんとのやりとりを掲示板に書き込み、それに対しいろいろと意見やアドバイスをくれる取り巻きがいてストーリーは進んで行く。中谷美紀演じる、恋の相手のエルメスさんが実に良い。こんな女性なら電車男でなくても恋に落ちそうだ。

 しかし、この映画は現実味が薄い。主演は山田孝之である。冒頭はアキバ系だが、エルメスさんとのデートのために取り巻きからのアドバイスでアキバ系の格好から変身をするのだが、役者なんだから良い男になる。ストーリーのほとんどがこの山田孝之の素の姿で出てくる。彼女に会わない時にメガネを掛けているぐらいだ。

 あいにく、実際のアキバ系の男はそうはいかない。美容院に行こうと服を変えようと、コンタクトレンズにしようと役者みたいに見違えるものではない。ネットや本で電車男の姿を想像しながら読んだ人はリアルなアキバ系の男を想像して読んだことだろう。だから、いきなり山田電車男の姿を見てしまった人にはそれがもうフィクションである。また、エルメスさんほどの女性に彼氏がいないことや、電車の中で助けてくれたとは言え、易々とデートに応じたりするところも現実離れを感じる。

 このように映画で見る限り、この作品はリアリティが極めて薄い。特に恋愛に関するあたりが。この話の原作者は想像でこの話を書き上げたに違いない。しかし、あの終わり方は意外だった。現実感がない話だからそうなのか?、原作もそうなのかは知らないが、あんな終わり方はないだろう。まあ、見る分にはオススメ。

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(秀)