第13話 ■たこ焼き

 「たこ焼き」とすべきか、「タコ焼き」とすべきか悩ましい。けど本題はそんなことには関係ない。私がタコ焼きとして幼い頃(今回の舞台は私が生まれ育った、とある田舎での話)食べていたものには、タコが入っていなかった。別に騙されていたわけでなく、了解の上でのこと。駄菓子の婆さんが「喫茶店もできる」と自慢し、「食品衛生なんちゃら」という資格を取り、店でタコ焼きを焼いていた。

 ところでそのタコ焼きであるが、串に3玉刺さって10円だった。ご案内の通り、タコは入っていない。ほとんどが天かすとキャベツだった。子供相手の同種の店で、チクワを入れた所もあった。お祭りのときなどに見かける、屋台の例もこの時分は串売りが基本だった。

 それがいつ頃からパック売りが基本になったかはあまり明確ではないが、駄菓子屋の婆さんは相変わらず串売りを守っていた。子供相手だからしょうがない。そして、パック売りを定着させる画期的な出来事は私が小学4年生のときに起きた。車でやって来る「たこ焼き 八ちゃん」の出現である。衝撃的だった。ボックスタイプの軽自動車(スバルサンバーだったと思う)でテーマソングを奏でて現れるのである。今でもそのメロディと歌詞は覚えている。1パック250円というのは当時の水準から言えば2割ほど高いが、それなりにおいしかった。パックは袋に入れて渡されるが、その袋が重要である。そこには少年とタコのイラストと共にテーマソングの歌詞が印刷されている。学校では「見たか?」、「食ったか?」と噂しきり。フランチャイズ方式で数台の車がテリトリー毎にまわって来ていた。今は車で来ることはないようで、店を数ヶ所構えるに至っている。

 その頃のパックはどの店も10個入りだった。ところが、今の関東圏は8個入りが主流である。大阪はパックにあわせて数量を決めている様だが、8個なんてケチなことはない。12個、15個なんていうのもおかしくない。奇抜なもので「タコ焼きグラタン」なるメニューを大阪で見た。器にタコ焼きを入れ、ホワイトソースをかけ、焼いたものだった。ちょっと安心。ところでなんで関東圏は8個入りなんだろう?。タコの足が8本だからという予想は当たっているのだろうか?