第1362話 ■雑誌の付録

 実家のすぐ近くに本屋があって、子どもの頃の私にとって、本屋と言えば、その本屋が全てであった。この本屋は貸本をメインに扱う小さな本屋で、貸本の他に、雑誌と文房具の販売を行っていた。

 ここで私は雑誌を買うことになるが、毎月一日頃になると、何度も店頭を覗き込み、梱包された陳列前の目的物を見つけると、急いで家に帰りお金をもらって、また店に戻ってくる。札(当時はまだ100円札があった。500円なら、もちろん札)を握りしめたまま、よく開梱を待ったものだ。何しろ、雑誌は当時の自分にとって、テレビに次ぐ娯楽媒体であった。やはり付録が楽しみだった。付録の量が多いと得した感じがする。その点では「冒険王」は魅力的だった。

 この本屋に限らず、売れ残った雑誌や本は返品される。特に雑誌は発行周期により、期限が決まっている。雑誌に関して言えば、返品されたものを別の店で売るわけにもいかず、そのまま廃棄されるのだろう。別のある店では、本を買うと古い雑誌の付録を選んで持っていって良いというところがあった。付録までは必ずしも返品しなくても良いのだろうか。もらって嬉しいが、その雑誌がないので作り方が正しくは分からない。組み立ての差込の凸と凹の番号を合わせながら、謎解きも楽しめる。

 こんな感じで雑誌はないものの、付録だけを入手する手段として、ほんの一時期ではあるが、駄菓子屋でこの売れ残りの雑誌の付録が「お楽しみ袋」として販売されていた。紙袋に付録が入れられ、それが「くじ」として紐で吊るされている。手探りで好きなものを選んで引く。確か20円だったと記憶している。私はこれの「お楽しみ袋」が結構好きだった。返品で回収しなかった付録を集めて作られたに違いない。

 当時、自分で作るのか楽しかったし、子どもが生まれてからは、作ってあげるのも、それなりに楽しかった。末娘は小学生になったが、未だに自分で付録がうまく作れない。私に頼ってくるが、あいにく忙しかったり、気乗りしなかったり。今では中学生の長男の仕事になっている。キャラクターは違うが、基本的な組み立て付録の構造やバリエーションは今も昔もそれほど変わってはいない。

(秀)