第1502話 ■名ばかり残業手当

 今年の1月に東京地裁で判決が出た、日本マクドナルドに対する、同社店長の残業手当支払い請求訴訟で「名ばかり管理職」という言葉が注目された。従来からあった言葉なのかどうかは分からないが、言い得て妙なネーミングだと思った。ポイントは地裁の判決が「管理職にも残業手当を払え」ではなく、「マクドナルドの店長は管理職ではない」という点だ。だから、名ばかり管理職。「ならば俺も」と言ったのかどうかは分からないが、この名ばかり管理職による残業手当未払いの請求訴訟がこの他にもちらほら起きているらしい。

 そんな中、日本マクドナルドが直営店の店長約二千名とエリア業管理職約数百人に対し、この8月から残業手当を支給すると発表した。この発表でマクドナルドは今回の対応が前述の地裁判決の影響によるものではないとし、その裁判についても控訴して戦うらしい。さて、この残業手当の原資に注目したい。従来、店長には店長手当てに相当する職務手当てが支給されていたらしい。これが今後廃止され、その分が残業手当にまわされる。まさに「行って来い」で支給総額は変わらないという図式だ。会社は店長が管理職であることは変えないが、店長手当てがなく、残業手当が付くのなら、それこそ管理職ではないのではないか?。

 日本の会社では長い時間会社に残って働いていると、「がんばっている」と見る人もいる。その一方で、残業を申請して残業手当をもらうことを必ずしも善としない雰囲気がある。この差にサービス残業が存在する。マクドナルドの例で考えれば、残業が多いと能力が低いと評価されそうだが、残業は不可避となった場合、サービス残業やむなし、となるのではなかろうか?。また、残業手当が少なくなると、給料が減ることにもなる。

 こうしてみると、マクドナルドの店長への残業手当支払いは見せ掛けだけの「名ばかり残業手当」という表現がふさわしいような気がする。

(秀)