第152話 ■愛せない二人

 読者からのメールの中にはコラムのテーマに関するリクエストがあったりする。それは9月の終り頃だった。そのメールには、「『愛する二人別れる二人』を見てますか。今会社で話題になっています。今度この番組についてコラムを書いて下さい」と記されていた。女性からのおねだりであるが、金が掛かるわけではないので、即刻OKの返事を返した。

 さて、どうしよう。実はこの番組を見たことないのだ。何度かリモコンでチャンネルを切替えている途中に目に止まったことはあったが、そこでリモコンを止めることはなかった。家人に聞いて初めて放送日と放送時間が分かった次第である。普段なら帰宅する時間でもなく、ビデオに録ってまで見るものでないため見たことがなかった。ましてや、よその夫婦喧嘩を眺めながら夕飯を食べる神経は持ち合わせていない。それに自然とモザイクに目を細めてしまった顔を家人に見られてしまうのはどうも都合が悪い。それでもせっかくのリクエストであるため、テレビ雑誌で調べたが、あいにく秋の改編期でその週の放送はなかった。しばらくすると今度はバレーボールで、いざとなるとなかなか姿を現わしてくれない。11月に2度ほど放送されたようだが、それも見逃してしまった。そしてとうとう今回の騒ぎである。

 以前放送に出演した奥さんが自殺をしたというのがことの起こりである。局のスタッフが確認に行ったら、旦那がテレビに出ていた人とは別人で、テレビに出ていたのは制作会社が無名男優を替え玉として使っていたのが明らかになった。神奈川県警のように隠さなかったのは潔いが、この「やらせ」が槍玉にあがり、とうとう番組は打ち切られてしまった。やらせが問題のような報道であるが、それよりも番組が険悪な夫婦仲を一層加速し、出演者が自殺してしまうような結果をもたらしたことの方が問題だと思う。

 さて、どうしよう。というわけで、せっかくのリクエストに対するコラムはこんな感じになってしまって、リクエストしてくれた女性には申し訳ない。しかし、肝心の本を読まなくても感想文の原稿用紙のマスは埋められるような才能を発見できて自分的にはOK。