第154話 ■カジノバー

 借金とデノミの話の続きが何故「カジノバー」というタイトルか疑問をお持ちの方も多いと思うが、まずは読んでくれ。もう7年ぐらいになると思うが、六本木のとあるカジノバーに仕事帰り、仲間数人と出かけた。そのバーのカジノはお遊びで換金や景品との交換などもやっていない健全な店である。入口ではドリンクを注文すると共に、コインを借りるシステムになっている。まあ、所詮お遊びということで最低単位の2,000円分のコインを借りたと思う。中にはブラックジャック、バカラ、ルーレットの台が数台づつ置いてあった。雑誌に紹介されているわりには、人の入りはまばらであった。六本木には他にも面白い店がいっぱいあるわけだから、わざわざ分かりにくい場所にあるカジノバーというのは流行らないのか。中途半端な怪しさよりも、この土地では思いっきり怪しい方が良いのかもしれない。

 にわかにできたお気軽な店で、ディーラーも素人で交代毎にカウンターのスタッフと入れ代わっていた。まあ、それなりにその夜は楽しめたが、その店に二度と足を運ぶことはなかった。それでも、いくつか学ぶことがあった。ゲームにはコインをベット(賭ける)するわけだが、やっている最中はゲームに熱中し、そのコインがいくらに相当しているかの判断など思いもしないのである。もちろん、勝ったところで換金でなきないからかもしれないが。特にルーレットとなると一度に何ヶ所も賭けたりするが、チープなプラスティックのそのコインは冷静に考えれば、1個100円なのである。財布から100円玉を出して直接賭けるとなると、こんな遊びはバカバカしくてできないだろう。

 海外旅行となると「安い」という先入観から衝動買いに近い買い物をする人がいるだろう。気分的にもハイで、あまり細かな銭勘定も野暮に思えたりする。デノミとはこれと同じような効果を一時的にもたらすのである。おまけにこれまで1万円だったものが、新100円となって、何だか安くなった気がして来る。もちろん、給料も安くなったような気がするだろうが。これにより、購買意欲が喚起され、インフレを呼び、結果世の中の借金は目減りするというわけだ。貯金なんかしている場合ではない。

※もちろん、インフレで損をする人の方が多いかもしれない。デノミに関しては賛否両論あることを付け加えておく。