第1596話 ■OLにっぽん

 とある商事会社の総務課の業務を中国の会社にアウトソーシングしようとするテレビドラマ。そこに当事者の様々な思惑がからまる。既にこの会社では人事と経理の業務を中国の会社にアウトソーシングしていて、一定の効果を得ている。そして今回、総務課の120にのぼる業務の80パーセントをアウトソーシングするにあたり、アウトソーシング予定先の中国の企業から優秀な二人の研修生が現れ、業務内容をマニュアル化していく。これに対し、既存の総務課のスタッフは自分たちの仕事がなくなる、と反発する。

 サラリーマンにとって、業務のマニュアル化というのは、なかなかややこしい。新たにその仕事を任される際に、きちんとマニュアルが用意されているケースは、私が経験した範囲では極めて少ない。ほとんどない。まず当事者は「そんなものマニュアルになんかできない」、「そんな定型業務ではない」と思っている。管理する側としてはマニュアル化したがるが、マニュアル化されてしまうと、その業務が誰にでもできそうに単純化されてしまう。しかし、サラリーマンとしては、マニュアルにない一味を実際には加えて業務を行っているもんだ。それなりのプロ意識があり、それがマニュアル化にブレーキを掛けているのだと思う。

 主演の観月あずさが演じる、神崎島子は総務課のエース的存在のOLである。かつての彼女が演じた、ナースの役どころとは大きく異なっている。そんな彼女が総務課から一人リストラ候補を決めるよう、部長から指示を受けるが、課員たちの事情に配慮し、それを決めることができない。それでいて、自分の不利益を省みずに周りの人々をかばっていく。

 番組の中で、中国人と日本人のギャップが、豆知識のように紹介される。「中国人は弁当なんか食べない(冷たいご飯を食べない)」、「中国人は謝罪なんかしない」、「中国人は寿退社なんかしない」、「中国人は結婚の前にまず家を買う」「中国人は割り勘なんかしない」。しかし、こんなギャップがあろうと、マニュアル化さえされてしまうと、業務のアウトソーシングが可能になるところに時代の流れを感じる。中国は豊かになったと言われるようになったが、それは一部の人のことらしい。優秀で安価な労働力はまだまだあるらしい。企業が世界を舞台に戦っていく上で、このようなアウトソーシング話はますます卑近なものになっていくだろうと、この番組を見ながら予感した。

(秀)