第1616話 ■ナンパ車にあこがれてた頃

 新年を迎えてようやく厄年を脱した。ちょうど丙午とあって、同じ年の人数はやや少ない。それにしても我々の年代は「遅れてきた世代」だなあ、と改めて思う。何に対して遅れてきたのかは、いろいろの分野において異なるが、あるときは政治の分野において、またあるときは音楽の分野において、そして今回は車の分野について話をしたい。

 私が自動車の運転免許を取った昭和60年代初頭は、魅力的な自動車が多かった。プレリュードにソアラ、スカイラインは鉄仮面。ハイソカーブームなんてのもあって、白いセダンも大流行だったし、こだわり派が支持したレビンやトレノも健在だった。しかし、大学生であったので、それらは高嶺の花でしかない。ガソリンスタンドでバイトしていたから、そんな車のフロントガラスをせっせと磨いていた。

 そんな話を会社の先輩にしたところ、「昔、プレリュードに乗ってたよ」とその先輩が話してくれた。彼は私よりも5歳年上で、当時会社に入って間もないものの、車を買うことができ、その中でもプレリュードを選んでいた。それで、サザンやユーミンを聞きながら、湘南なんかに向かっていたことだろう。何とうらやましいことか。

 さて私の場合、いざ社会人となって給料をもらうようになったは良かったが、早々に結婚をして子供が生まれたため、自動車を買う余裕なんてなかった。しかも上京者とあって、道も分からないし、車が多くて社有車の運転にも難儀した。今頃になって自動車を短いスパンで乗り換え続けているのは、多分、あの頃の我慢の反動なのだろう。

 最近、自動車が売れていない。特に若い人が車を買わないらしい。自動車にそれほど魅力を感じないことが理由とされているが、私としては、携帯電話の料金のために車に割り当てられるお金がないという経済的な理由も大きいと思っている。確かに、あの頃のように魅力的な車な車がないのは事実だが。楽しいナンパ車の復活が若者の自動車回帰への早道だと思う。

(秀)