第1672話 ■世襲と襲名

 最近、国会議員の世襲が話題になっているが、ことの善し悪しはさておき、歴史的に見れば権力の移動は長い間世襲を軸に繰り返されてきた。将軍様の例を見れば特に明らかだ。日本だけでなく北朝鮮でも将軍様は世襲であるところが面白い。加えて、千代田城にお住まいの御一族様は、堅く世襲であることが条件とされている。

 さて、本題はそんな堅い話ではない。噺家の話題だ。正蔵と三平。いずれも林家の名跡であり、ともに先代三平の長男と次男が継いでいる。正蔵とはあまり馴染みのない名前だが、先代三平の父親も正蔵を名乗っており、いずれは先代三平がその正蔵の名を継ぐことを期待されていたが、それが叶わず彼は他界してしまった。三平の晩年に正蔵の名跡を先代の正蔵(彦六)に貸していた、そのタイミングの悪さもあった。

 正蔵は林家の止め名(一門の最高位の名跡)として、格という意味では、三平よりもはるかに格上である。一方、三平は先代の一代で大きく育てることができたが、それまでである。むしろ三平は前座から使用してきた、単なる前座名だった。ただ今となっては知名度においてはピカイチである。

 ところで私が思うに、いや、私以外の人でも多くの人が、先代三平の息子達が正蔵、二代三平を襲名したことに違和感を感じているはず。早すぎるというか、芸がまだその域に達しているとは言いがたい。それでもそれが許されているのはひとえに世襲であるから。正蔵はさておき、三平は息子でないと継げなかったことだろう。

 やはり世襲にはいろいろと批判が多いようだ。

(秀)