第1686話 ■波の数だけ抱きしめて

 夏本番の到来を前に、懐かしい夏の映画の話を少々。80年代の終わりに始まったホイチョイプロダクションズの3番目の映画作品である、この「波の数だけ抱きしめて」。そっくり80年代のエッセンスが入っている。

 この映画の公開は91年で、映画の冒頭も同年であるが、話の舞台はそこから9年遡って82年となる。茅ヶ崎のミニFM局が舞台になっているが、確かにこの時期にミニFM局が流行りだしたのを記憶している。当時私は高校1年生で、実際に自分でミニFM局をやろうと思ったので記憶している。けど、私の計画は協力者が得られずに未遂に終わった。

 さて映画の方だが、大学生4人で運営しているミニFM局が放送電波を中継しながら、その受信エリアを合法的に拡大していこうと実験を開始していた。そこにたまたま彼らの放送を耳にした広告代理店の営業マンが、彼らの計画を後押ししながら、自らの仕事とのタイアップを計画していく。そこにメンバーの中での恋愛が絡んでくる。

 茅ヶ崎の一部でしか聞かれなかったミニFM局が、中継器100台を数珠繋ぎにして、国道沿いに湘南エリアをカバーするFM局へ。そこからは私もリアルタイムで聞いた、80年代の曲が次々と流れてくる。そしてヤマ場のシーンでは御馴染みユーミンの曲が流れてくる。

 かなり計算尽くされていて、ある種の黄金律を忠実になぞったような雰囲気の作品だ。単なる恋愛映画でないところも良い。80年代の湘南。江ノ島が見えただけでも私の琴線は大きく震わされる。

(秀)