第1801話 ■反原発を語るには

 自宅からの最寄駅で朝街頭演説を行っている、某野党の国会議員候補者がいる。今朝は「電力の自由化」を訴えていた。電力販売の独占状態を止めて、利用者が好きな電力供給者と契約をして電力の供給を受けられる、ということらしい。原発反対の人は原発で作られていない電力を購入できると言う。実際そんなことが実現できるかは私には分からない。

 過日の大地震による原発の事故で、にわかに反原発の機運が増した。これまでの反原発と言えば、左翼系の政党や団体のお題目であって、世の多くからは現実味がないということで、あまり注目されていなかった。かつての与党は原発を推進し、その建設現場に多くの金を落とさせ、原発関連企業を庇護してきた。そこに今回の大地震が起きた。

 途端に手のひらを返したように反原発の大合唱である。東京電力をはじめ、電力会社が悪者になって、対応が不十分な政府にも批判が集まる。けど、今の電力事情をもたらしたのは、当時の政権与党であった自民党の責任に依るところが極めて大きい。たまたま民主党が政権を担当しているときに地震が起きたから、「震災後の、特に原発をめぐる対応が良くない」と内閣支持率が下がり、政党支持率が大幅に民主党から自民党に流れているが、もしこれが自民党政権時であったならば、自民党と民主党の立場が入れ替わっていたに過ぎない。

 本当に自民党は民主党を責める資格があるのか?。原発現場の首長は少なくとも原発の建設や稼働を容認してきた。中には積極的に受け入れてきた首長もいることだろう。そこからもたらされる税金や補助金などを嬉々として受け取っていたのではなかろうか?。そのような首長、時の政権を選んできた住民はどうだろうか?。(まだまだ書きたいことはあるが、自粛する)。

 駅で街頭演説をする冒頭の候補者も自宅の屋根にソーラーパネルを載せたというなら支持しても良い。電力の自由化よりも自家発電の促進支援を行う方が実現度が高く、分かりやすいと思うのだが。かく言う私は地震が起こるかなり以前、戸建住宅に住むようになった5年前から太陽光発電の導入を考えていたが、費用と性能の面で導入のタイミングを待っていたところだった。

 反原発や脱原発を唱えるのは易しい。多少状況は異なっているが、言うだけならかつての左翼系の政党や団体と変わらない。言うからには何らかの具体的な活動を実践しないと説得力がない。15%節電したところで、現在の原発依存度は約30%超だから、この程度で原発をなくすことはできない。いっそ原発依存を脱したいと主張する人は太陽光発電などによる自家発電を実践すべきだ。国会議事堂の屋根でも、政党本部のビルの屋根にでも至急ソーラーパネルを載せてみたらどうか。「反原発、脱原発」。この点においては、私は実際に自ら行動を起こした人の主張にしか耳を傾ける気にならない。

(秀)