第1872話 ■小さな達成感でGO

 「ポケモンGO」が日本でもリリースされ、予想通りというか、予想以上というか、結構な騒ぎとなった。もちろん、懸念事項も多い。歩きスマホの危険性、立ち入り禁止地域への無断侵入、バッテリーが保たないなどなど。「ポケモンGO」を自動車やバイクを運転しながらやって検挙される例が相次ぎ、「ポケモンGO」に熱中する人からのひったくりも発生している。こんな調子だと、きっと数日以内に特殊詐欺が起きると私は予想している。

 流行と言うのは、熱心な層がいくら頑張っても、そこから周囲にいる人々の賛同や共感がないと成立しなかったり、ほんの僅かで終わってしまう。その点、「ポケモンGO」は普段ゲームをやらない大人までも巻き込んで、全体的な雰囲気が既に醸成されている。ポケモン世代となると、20代の前半から中間までがそうだと思う。何故なら、自分の長女、長男が熱心にテレビを見ていて、カードやら何やら、もちろんゲームソフトも買ってやった。そんな記憶があり、年齢層を考えるとそういう年代になる。もちろん、現役の子どもたちも夏休みとあって楽しんでいるし、直接関係ない層でも、話題に乗り遅れては、ととりあえずダウンロードしてみる。

 もちろん私も試してみた。最近は暑い日が続いているため、そうそう歩けていないが、いつもパソコンの前に座ってばっかりだから、意識して散歩には出るようにしている。現実の世界のカメラ越しの映像と仮想世界が地図やアニメーションで連携しているのが魅力であることはよく分かる。けど、それだけでは、人々がバッテリーを大量に消費しながら歩きまわる動機にはなりきらないと思う。

 この動機付けは、「小さな達成感」にある。ポケモンを捕まえるという、現実では何の意味もなさない行為であるし、それで何かしら富が増えるようなことはまずない。しかしそれでも多くの人を駆り立てるのは、ポケモンを捕まえた時の達成感に他ならない。難しすぎてはいけない。むしろ簡単な方が良い。1つ1つは小さな達成感だが、それを連続して味わえるのが心地良い。そして、数量の面での奥深さがある。

 人が生きていく上で達成感を得ることは非常に重要である。ただ、それに慣れてくるとさらに高度な達成感を人は求めるようになる。とりあえずのスタート時点での達成感はこの程度が丁度良いかもしれないが、それが続くものか、あるタイミングで「何やってんだろう?!」と気が付く人がどのくらい出るかが、転換点だと思う。世の人々は国を問わず、達成感に飢えている。

(秀)