第188話 ■PTAの謎

 朝、会社の通用口のところで労働組合がビラを巻いていた。また例年の如く、賃上げ交渉の時期がやってきたわけである。やっている当事者は非常に一生懸命であるが、一般社員はどこか冷めている。このような経済状況でも幸運にも危機感を感じることなく日々過ごしているわけで、どこかで、今の政治に対する無関心状態の延長のような気がする。さすがに今年の賃上げやボーナス交渉にはあまり期待している人も少なく、やや諦め感もある。これも政治への不信感や無関心と共通している。

 ところで学校の多くにはPTAという組織がある。小学生の時は授業参観=PTAと思っていたが、正しくは授業参観というのはその後の会議への参加を促進させるエサでしかなかった。PTA(Parents & Teachers Association)の構成要素はその名の通り、父母と教員である。会の目的は「子供達の幸福のために教育環境等の整備のために活動すること」である。ここまでは非常に分かり易い。しかし、具体的な数値目標や活動の対象が曖昧なのである。例えば会社であれば「利潤の追求」が最優先で、そのために予算があり、競合他社としのぎを削るのである。一方、PTAはどうだろうか。数値目標などそもそも設定出来ない。隣の小学校と戦うようなこともない。任意団体として似たような性格かなと思って比較してみたが、労働組合には団体交渉権があり、経営陣とわたりあう機会があるが、PTAは校長や教頭も構成員であるため、対学校との団交もないし、校長を飛び越えての教育委員会との交渉も保障されていない。

 それよりも何よりも最大の謎はこんな私が現在、小学校のPTA副会長をやっていることだろう。私の使命はただ一つ。何かと「教育上、良くない」と言って、「8時だョ!全員集合」のような娯楽番組を俗悪番組に指定したり、仮面ライダースナックを生産中止に追い込むような、おばさん達と戦うことであった。幸か不幸か今のところ、そんな出番はない。