第1900話 ■女性部長奮闘ドラマ

 現在フジテレビ系では女性部長が奮闘するドラマが2本放送されている。しかも両方とも勤務先として広告代理店が舞台になっている。一方は松嶋菜々子主演の「営業部長 吉良奈津子」。そしてもう一方は鈴木保奈美主演の「ノンママ白書」。後者については土曜日の深夜の放送であるし、制作は東海テレビであるため、視聴できるエリアは限られているかもしれない。

 前者の吉良部長(松嶋菜々子)は産休・育休明けで会社に復帰したら、元の制作現場ではなく、未経験の営業、しかも部長に昇進していた。女性管理職というお飾りでの会社の思惑かと思ったら、会社は隠蔽しているある不正を彼女に押し付け、彼女に責任を負わせて辞めさせようとしている。会社の仕事に追われ、家事はままならず、特に育児がおざなりになっている。夫の不満が募る一方で、夫のベビーシッターとの浮気(未遂)騒ぎも。そんなアラフォー女性部長。

 後者の土井玲子(鈴木保奈美)は50歳を迎えた企画制作部長。毎晩のように行きつけの店で、同期入社で同社の人事部に勤める菊池桃子演じる大野とライターで渡辺真起子演じる葉山と三人で食事をしながら会社での様子を語っている。そして、その会話に出てきたシーンが、会社を舞台としたドラマシーンとして挿入される。既に起こったことを回想する形で話が進行するスタイルをとっている。ちなみに三人の設定は、鈴木がバツイチ独身、菊池が未婚独身、不倫関係進行中、渡辺が既婚、但し夫の浮気を疑っている、となっていて、いずれも子どもがいない。だから「ノンママ」である。ママにならなかった、なれなかった、そんなアラフィフ女性たちのドラマ。

 「ノンママ」ドラマはかなり刺激的な内容で、これではゴールデンタイムには到底放送できるものではなさそうだ。例えば、子育てをしながら仕事を続ける「ワーママ(ワーキングママ)」の一例を社内で足を引っ張る困った存在として、ネガティブに描いている。性的な会話も、実際にそのような場面で交わされているだろうが、決してテレビの脚本にならないようなことも平気で登場してくる。「閉経したら、部長になった?!」、これは例の三人でいるときの鈴木保奈美の台詞。

 かつて赤名リカとして語っていた台詞にも驚いたが、それはある意味、嘘っぽかった。しかし、今度は女性なら誰でも通り過ぎることについて語っている点でリアルさを感じる。土井部長は同期で上司の本城副本部長(高橋克典)との恋の予感。ともにバツイチ。そして過去に何度か関係を持ったこともあるという、やや複雑な設定。早くも社内で二人の関係を疑う怪メールが土井に届く。

 このドラマは視聴率が良くなく、放送前からもいろいろとネガティブな話題がネットでも飛び交っていた。フジテレビがこの時間帯にドラマを持ってきたのは最近のことで、そもそもこれまでのドラマが面白くなく、苦戦していた枠なのは間違いない。それを役者を多少豪華にしても、番宣が弱かったりとどこまでが本気なのか分からない。如何にもフジテレビ(系)らしく、バブルの頃の栄光が忘れられない、などと言われているようだ。ただ、「こんなドラマ、誰が見るんだ?」って言うなら「俺が見てる」と答えておこう。

(秀)