第1905話 ■対前年比という不幸な指標

 年度末近くになると、あちこちで道路が掘り返されたりの工事が増えると言われている。実際に調べたことはないが、あながちハズレでもないような気がする。年度内に予算を使い切るためと言われているが、モノを買うのならまだしも、工事なんて相当の期間を見込んで発注するものではないかと思ったりもするが。

 予算が余ったのなら、無駄遣いすることなく繰り越せば良いと思うだろうが、予算・会計は単年度主義のためにそうはいかない。これをミスると当事者たちは2つの不利益を被る。1)計画性のない人と判断される、2)次年度以降の予算が減らされる。この2つを回避するにはどうするか?。答えは簡単、予算を使い切るしかない。うまくこれで内需拡大等の経済効果が起きていれば良さそうだが、目的が曖昧な思いつきのような使途にあまり期待はできそうにない。

 こんな感じの様子を聞いて、いろいろと不満を言っている奥さん方も多いだろうが、その旦那さんの会社がそんな行政からの発注でいくらかの利益を上げているかも知れない。急先鋒で攻め込む議員の支持者の中にもそんなことで回っている会社の関係者がいるかもしれない。そして何よりも、多くの民間企業も同じようなことをしているはずだ。

 売上予算の一方で、経費予算も組む。会社内部は、損益の点からプロフィットセンターとコストセンターに分けられる。コストセンターは表向き売上がないので、経費予算だけとなるが、これと言った施策がない場合は「対前年比」というものさしが当てられる。数字を作るにもまず前年度の数字を起点とすることがほとんどだ。自分にも経験がある。

 所詮、他人の金だからなのだろう。家庭で毎月や毎年度末に手持ちの金を使いきろうなんて江戸っ子でもいないはず。原因は現行の仕組みなのだから、目先の現象を批判するばかりではなく、そもそもの原因に立ち返っての改善が必要だ。そうしないと、文句だけでは何のエネルギーにもならない。

(秀)