第1979話 ■調査のバイアス、その例

 家人が私に話し掛けてくる話題の大半はテレビでやっていたネタの受け売りだ。先日もそうだ。待機児童の話題をテレビでやっていたら、「最近は八王子が人気らしいって」と話し掛けてきた。一通り、話を聞いてから、「けど、お父さんの通勤時間が長くなるのは大変だから、どうだろう?」と私は応えた。「けど、最近はいろいろと便利になって、インタビューにも『良いですね』と応えてる人がいて」などと言う。

 家人は八王子から都心に通勤する際の状況など全く予想できていないはず。そこで私は反論する。「八王子の現地でインタビューをするなら、そんな目的で引っ越してきた人だから、『良いですね』と応えるに決まってるだろう」。終いには、「お前の話は薄いんだよ」と言って、いつも相手を不愉快にし、気まずい雰囲気になり、私がリビングを出て行くパターン。

 テレビの影響はすごいと言うか、受け手が無防備過ぎるのか、流れてきた情報を全て正しいと受け止め、わざわざそれを人に話してまで広めたいのか。ただ、広めたいか、と言うとそういう意図すらないようで、単に何かを話したいのが先にあって、そこに流れてきた情報をそのまま、ほぼ無意識に、けど個人的な思い込みなどの要素を加えて、受け流しているだけのようだ。世に言う口コミとはこの程度のこと、こんな背景であることが大半なのかもしれない。

 我が郷里、佐賀市が「都市の暮らしやすさランキング」で1位になったらしい。しかし、肝心の雇用・就業という決定的な要素を欠いた調査では、このランキング結果を見て、「子育ての環境に良さそうだから」、なんて理由で人が越してくるようなところではない(ゼロではないかもしれないが)。八王子の例を伝えたテレビ局、暮らしやすさランキングを調査した野村総研、いったい何を伝えようとしていたのか、私にはさっぱり分からない。

(秀)