第1989話 ■声が届く範囲

 嫌なことが起きた場合、周りにそのことを伝え、周りからの共感を得ようとしたり、そのような行動を見たことはないか?。自分が理不尽だと感じたことなどを周りに伝え、そこに共感を得ることで、その本人の不満が幾らかやわらいだりする。上司への不満や客からのクレーム、あるいは配偶者への不満かもしれない。

 その理不尽に思えることや不満が必ずしも正統でない場合がある。また、正しいとか正しくないとかではなく、当事者間での力関係で生じているものもある。そのような客観的な背景などは伝えず、いきなり自分の主張だけをする。あまりにも唐突過ぎて、面倒だから適当に聞いたふりをする場合もある、私の場合。

 この様に口に出すことが、いろいろと不満等のガス抜きとして機能してきたわけだが、これは身近な小さな世界の中で完結しておけば良かった。不満に対する周りからの同意はそれほど積極的な同意ではなく、単なるやり過ごしのための相槌程度だったかもしれない。まあそれで事態がおさまれば良かった。

 ただ変に怒りをおさめたことで、本来の解決が適正に行われることを阻害していたりしないだろうか。「クレーマー」なんて言葉で排除したりしていないだろうか。確かに変なお客様はいる。それに対応するストレスも相当なものと思う。そういう現場を自分も見てきた。

 これまで自分の都合の良い形でやり過ごしていたことを、誰にというわけでなく不満としてぶちまけ、SNSなどで公開するとちょっと状況が変わってくる。過度の主張は炎上という他者からの反撃にあい、不満のエネルギーに満ちた主張は他人をも不快して敬遠されるようになる。

 不満への共感を求めるのは、「声が届く範囲」という規模が最も適しているようだ。

(秀)