第1997話 ■真四角

 私が自分用のカメラを初めて手にしたのは小学校四年生のときで、おもちゃ屋で買ってもらった。今でもその金額ははっきりと覚えていて、千八百円だった。括りとしては、おもちゃなのだと思うが、実際にフィルムを入れると、ちゃんと写真は撮れる。おまけにフラッシュ(ストロボではなく、使い捨てのフラッシュバルブを使うタイプ)ガンも付いていた。ただ、フィルムが当時主流の三五ミリのものではなく、6×6版やブロニー版と呼ばれる、旧式の中型カメラのものだった。フィルムの画面サイズは大きく、真四角である。

 このおもちゃカメラがこのような特異なフィルムフォーマットを採用した理由は、フィルムの巻き上げのための機構が極めて単純で、コストダウンのためだったに違いない。本来なら、1コマ分のフィルムが移動したら、自動的に巻き上げのストップが掛かるのが、このフィルムを使用するカメラの標準的な機能であったが、そんなものもなかった。背面の覗き窓から見える数字を見ながら、慎重にダイヤルを回してフィルムを送る。

 やがて、かつての二眼レフカメラなども手に入れ、同じ様式のフィルムを使用して真四角な画像の写真を何枚も撮った。私達の生活の多くは横位置、横長の構図で作られているものが多い。テレビや映画のフォーマットがその代表であるし、それは我々の両眼が横並びで、横に広い画像を見ているからだろう。そこに数年前から、携帯電話からスマートフォンと、縦位置、縦長の画面を見る習慣が飛び込んできた。

 Webサイトの画面をデザインする際に、縦位置、横位置の写真が混在していると悩ましい。パソコンで見た場合は良くても、スマートフォンで見た場合に、縦位置の写真が大きく表示される傾向にある。逆に合わせると、パソコンで見た場合の画面構成がおかしくなる。正直なところ、これが真四角な正方形の構図であれば、と最近特にそう思う。

 Instagramが真四角の画面サイズなのは(最近は長方形での画像投稿も可能になったようだが)、私の悩みのように、スマホでもパソコンでも、縦画面でも横画面でも、画面表示のレイアウトがやりやすいからそうしたのではなかろうか。若い人には真四角な画面での新鮮さも受けていると思う一方、私にとっては懐かしさの印象がはるかに強い。

(秀)