第227話 ■アイドルの時代

 80年代はアイドルの時代だった。世間がポスト山口百恵を求め、松田聖子や河合奈保子のデビューからこの一連のブームが始まった。そして、私と同年代のアイドル達が数多くデビューする時期へと続く。このあたりの多くは今でも芸能界に結構生き残っている。テレビ番組もアイドルが露出する番組が多く、雑誌も「平凡」や「明星」を始め、「Bomb」や「Dunk」のようなA5サイズの雑誌が数多く出版された時である。

 アイドルと一口に言っても、売れ方やポジションは千差万別である。順に挙げるとすると、「ザ・ベストテン」などに必ずランクインするアイドル。ジャニーズ系や小泉今日子あたりがこれにあたる。既に松田聖子はアイドルの域を出ていた。続いて、アイドル番組やバラエティ番組にしか出られないアイドル。松本伊代、堀ちえみ、早見優、石川秀美ぐらい(彼女らは私と同年代)がこれであろう。そして、ほとんどテレビに出られず、多くの人の記憶にはとどまっていないアイドル。しかし、彼女達のマイナーぶりが熱狂的なファンに支持されていたりする。例を挙げるとすると、パンジー(北原佐和子、三井比佐子、真鍋ちえみ)、CoCo、Ribon、ラジオっ娘、セイントフォー、スターボー、リフラフ(SAMもメンバーだった)、徳丸純子、新井薫子、井上望、渡辺桂子、etc・・・etc・・・。水野きみこも忘れてはいけない。書き連ねるときりがないし、もっとマイナーのも知っている。

 しかし、こんなアイドル時代も80年代も半ばを過ぎた頃から廃れていく。まず、これまで多くの歌手の登龍門として機能してきた「スター誕生」が放送を終わる。そして、その後の登龍門はプロダクション主導の大規模オーディションとなっていった。しかし、これが思ったほどの効果を生むことなく、優勝者のその後の活躍も芳しくなかった。丁度その頃に、「夕やけニャンニャン」でおニャン子が台頭して来る。また、夜は素人に毛の生えた程度の女子大生が、そう、今で言えば「ワンギャル」のような人々がブラウン管に溢れた。それは取りも直さず、素人とアイドルの境が希薄になっていった時期でもある。お気軽なカリスマが登場するようなご時勢であり、メディアと共に人々の嗜好は多様化している。しばらくはあのようなアイドル時代の再来は難しい気がする。どうだろうか?。

 インターネットで個人のページとして、’80年代のアイドルの思い出を当時の残骸から再構成して公開しているサイトがある。著作権や肖像権の観点から考えれば少なからず問題があるが、これには自分も結構楽しませてもらった。しかし、いざ冷静になってみると、かつての親衛隊やカメラ小僧達ももはや三十半ば。そんな彼らが嬉々として昔を懐かしみ、せっせとホームページを作っているかと思うとちょっと引いてしまう。