第258話 ■おでかけ

 今日は久しぶりに仕事で外出である。仕事で外に出る事は月に数えるほどしかない。このため、コピー機のメンテナンスに来た人に「今日は暑いですね」と挨拶されても実際にどれくらい暑いのかは分からない。デパートの店員が、お客様の傘を見て、「あっ、雨が降ってるんだ」と気付くという話を思い出した。今の季節、天気の良い日の外出はことの他うれしい。

 自社の営業マンに連れられ向かった先は「溜池山王」の駅タワービルにある某大手通信サービス会社であった。そこで法務担当者と会うのが今回の私の任務だ。現れた法務担当者は女性であったが、名刺にはしっかりと「法学博士」と記されていた。そのせいか、ダメなことには、にっこりと笑って、はっきりと「ノー」と言うつもりであったが、そうもいかず、相手のご機嫌を取るためにわざと相手が得意そうな話題の質問を返す。そして、講釈を頂いた後に「勉強になりました」という作戦も最近はうまく使えるようになって来た。今度は相手の持ち物や身に付けているものをさり気なく(ここが難しい)誉める技を習得したいと思っている。

 打ち合わせが済むと、「このビルからの眺めは良いですよ」ということで、リフレッシュルームに向かった。ここ、永田町近辺に高層ビルはほとんどない。国会議事堂や首相官邸と、堀をまたいでは皇居もあり、保安上の理由で高層建築物の建設が難しいところである。だからこのビルはこのあたりでは最も高い。東京タワーを望むと、(タワーの真ん中あたりにある)大展望台と同じくらいの高さのような気がする。もちろん、こちらはタダである。窓から国会議事堂を見下ろす向きの窓ガラスの下の方にはスモークフィルムが貼られている。そこには首相官邸があるということだった。国会議事堂は後ろから見る形になる。正面側の大通りの角には警視庁があり、ドラマ「ショカツ」の初回冒頭シーンで羽村管理官(松岡昌宏@TOKIO)が収賄容疑の代議士を逮捕したシーンはあのあたりか、と思ってみたりする。

 さあ、コラムのネタもできたし、そろそろ会社に帰るか。地下鉄の駅へと吸い込まれていった。しかし、たどり着いた先は会社ではなく本屋であった。