第266話 ■先生

 「先生」とは文字通り、先に生まれた人という意味がもとになっており、今の日本語で言えば「先輩」という言葉があたるのか。しかし、先輩・後輩というのは両者が共通の組織に所属した、などの条件が加わるため、漠然と年上というだけではなかなか使用しない。一方、課長や部長といった役職名は敬称としても機能する。ところが、「先生」とは敬称以上に、尊称である。これに役職が加わったらどうだろう。校長先生、教頭先生。これは敬称+尊称で、殿様キングスぐらいすごい呼称となる。

 学校の先生達はお互いを「○○先生」、「□□先生」と言って呼びあっている。教師生活20数年のベテラン教師が大学出たての新米教師を「先生」という尊称を付けて呼んでいる姿は一般企業から見れば不思議な光景でしかない。かたや企業に就職して体育会系の組織の中、下働きを始めたばかり、かたや「先生」と持ち上げられる者が、同じ社会人一年生というのはやはりどこかおかしい。幼稚園の教諭など短大卒の20歳ということもある。もちろん、子供を産んで育てたことなどあるはずない。子供を相手に「先生」と持ち上げられていても、一般企業で新入社員が一人前の戦力になるまでを考えれば、1、2年目の教師など、まだまだ半人前といったところであろう。

 しかし、それ以上に厄介なのは議員の先生方かもしれない。衆議院の解散・総選挙が近づき、街角でポスターをかなり見かけるようになった。猿は木から落ちても猿のままだが、この先生達は選挙に落ちてしまえばただの人になってしまう。こんな川柳を思い出した。「落っちゃえ(落ちた人)が 電信柱で まだ笑う」