第268話 ■神様なら怖くない

 社会に出ると色々なものが見えてくる。学校で教えてもらったことよりもこっちの方がう~んと有益だったりもする。唐突だが、「お客様は神様です」という、あの言葉はウソである。親身になっていろいろと似合う服を探してくれるカリスマ店員も本当にその客に似合う服よりも、少しでも高いもの、売れ残って困っているものをすすめているかもしれない。「顧客第一主義」などを掲げている企業は多いが、そんな会社でも従業員はお客様よりも会社の方が大切であるし、会社や上司の方を向いて仕事をしている。管理職はさらに上の人々の顔色をうかがっている。ちなみに上の方ばっかり見ている人を「ヒラメ」と言う。社長は株主の方を向いているし、オーナー社長でさえも銀行や仕事をくれる得意先の方を向いているかもしれない。所詮、お客様よりも自分に給料をくれたり、身分を保障してくれる人の方が大切なのである。

 なにもこんな話は民間企業に限ったことではない。公務員が「公僕」であることなど、周りはおろか、本人達も忘れてはいないだろうか?。交通違反で警察署に出頭した際には「いらっしゃませ」の一言ぐらい言ってもらいたいもんだ。余計に腹が立つかもしれないが。選挙の度に「有権者、有権者」と政治家達は言うが、彼らが大切に思うのはそれが大量に束になっている状態の時だけで、よっぽどの田舎でない限り、一票一票が大切であるなどと思っているはずもない。そして、有権者の意向よりも自らの保身と利益が大切なのである。

 うちのマンションの管理人は派遣元の管理会社のいうことは聞くが、住人のいうことは聞かない。世の子供達は父親よりも母親の言うことをよく聞く。飯を食わせて、欲しいものを買ってあげるからである。うちの子でさえ、銀行に行けば自動的にお金が出てくると思っているし、母親の財布からは湯水の如くお金が出て来ると思っていたようだ。自分で稼いだ金でありながら、足りなくなって追加で小遣いをもらうときは後ろめたい。きっと怖いものがないのは神様ぐらいだろうだろう。神様なら怖くない。