第27話 ■プロを目指す

 これは田舎の楽器屋に限ったことではないだろうが、楽器店の掲示板に貼ってあるバンドのメンバー募集の掲示には笑わせられる。募集したいパートや好みの曲に関する情報の他に、「テク重視」や「プロを目指す」なんてフレーズが恥ずかしげもなく並んでいたりする。一体彼らはプロへの道程が具体的にイメージできているのであろうか?。その楽器屋でナンバー1のバンドでもそんなものは世の中、楽器屋の数だけ存在する。野球で頑張って「甲子園に行こう」というのがむしろ現実的であろう。そんな田舎の町にスカウトなんか来やしないって。

 なにもこんな話は楽器屋の掲示板だけに限らない。雑誌にもバンドのメンバー募集のページはある。見るからに初心者向けの雑誌なのに相変わらず、「テク重視」や「プロを目指す」なんてぶち上げている。自分以外の全パートを募集している奴なんか、相当あやしそうだ。うまい奴はそんな募集なんかなくたって声がかかるから、募集なんかに目もくれない。うまいのにメンバーが揃わないのは性格か趣味が相当悪いわけで、そんなメンバーを募集してもしょうがない。

 変に気負ってプロを目指そうなどと欲張るから、メンバーとの不仲が生じたり、挫折を味わったりする。変にプロというものが日常に露出しているから、青少年に悪影響を与えているのだろう。「趣味だから」と割り切った楽しみ方もあるだろうに。もっと気ままに楽しむことに気が付けばきっともっと楽しくやれると思うが。