第274話 ■在宅ネットビジネス??

 ついに私のところにもマルチ(無限連鎖講)勧誘のチェーンメールがやって来た。「在宅で出来るネットビジネスのご案内」というメールタイトルであった。最初はホームページ作成などのフリーランスを募集しているものかと思ったが、読み進むと、「どこが、在宅ネットビジネスだ??」という内容である。「1万円が2、3ヶ月で200万円以上に…」というあたりで、ピン!と来た。メールの下の方に5人の氏名(カタカナ)と銀行&支店名、それに口座番号が書かれている。指示されていたルールとは次のようなものだった。まず、この五人の指定口座に2,000円ずつを振り込む。その後に先頭行の人を削除し、以下の4人の順位をくり上げ、一番最後(5番目)に自分の口座を入力し、同じ文面のメールを作成する。あとはできるだけ多くの人にこのメールをばらまき、お金が口座に振り込まれるのを待つだけ、というものである。

 メールの前半部分にはこの仕組が合法的であるかのような弁明がつらつらと書かれているが、内容は支離滅裂である。例えば、「昨年春頃、東京12チャンネルのニュースで…」とある。東京12チャンネルというのは、もう10数年も前にテレビ東京と改名している。さらに、「(このニュースで、)この計画に参加することを禁じる法律はまったくない(ことが判明しました)」から合法だと言っているところからすると、このメールを書いた人は「無限連鎖講の防止に関する法律」というのをご存知ないのか、いや、意図的にごまかしている様な気がする。第一、怪しい人間の第一声は「決して怪しいものではありません」、と相場が決まっている。自ら「自分は怪しいです」なんて言うはずはない。けど、十分に怪しいのは見て分かる。それに、価値を生み出さないこのような価値の移動は、一方に儲かる人がいれば、もう一方に必ず損をする人がいることで成り立っている。誰もが200万円を手にするシステムなど成り立たない。この結局は破綻し、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えることが法律で無限連鎖講を禁じているそもそもの理由である。しかし、私としてはこの200万円以上という根拠がどこから出ているかには興味がある。

 メールの最後の部分にはルールを厳守する旨の注意書が記されている。「振り込みをしなかったり、ルールに反して順番を変更したりしたら、他の人から怨まれることになります」とある。ここがこのシステムの最も脆いところである。いくら怨まれようとも、インチキをしてもそれは分からないし、誰にも咎めることができない。「金を振り込まずにメールを転送してみようか」ぐらいは誰にも思いつく。このメールに名前が載っている人達はうまくお金を手にすることができたのだろうか?。その前にちゃんと2,000円ずつ振り込んだのだろうか?。