第318話 ■払い戻しとアンパン

 皆さんはJRの特急電車(新幹線も含む)が2時間以上遅れたら、特急料金(普通運賃部分を除く)が払い戻しとなることをご存知だろうか?。私は過去に2度、このルールの適用を受けている。そのうちの一件はまさにラッキーとしか言い様がない。出張で沼津に出かけた帰り、三島から東京まで、こだま号を利用した。行きも同様に新幹線を利用したが、折りからの台風接近の影響でこの時点でもダイヤは既に乱れていた。それでも何とか出張先には間に合ってたどり着き、仕事を終え、三島駅のホームに立った。既に駅頭でダイヤがその後大幅に乱れていることは承知していた。ところが運良く、すぐに電車はやってきた。そして、東京駅の新幹線改札で特急券を渡そうとしたところ、駅員が「払い戻しです」とスタンプを押して切符を返してくれた。どうやら私が乗った新幹線は三島駅にたどり着く以前に、2時間以上遅れていたようだ。ちなみに私がこの新幹線に乗っていた約1時間は予定通りのスピードで運行していた。しかも、この電車は待ち時間なく現れた。まさにラッキーな話である。

 別にこのことで味をしめたわけではないが、遅れが分かっていながら、新幹線に乗って帰省したことがある。同様にこの日も台風の接近で大幅にダイヤは乱れていた。とりあえずニュースで大幅な遅れがあるものの、運行自体は行われていることを確認して東京駅に出かけた。改札を通ったのは夕方の4時過ぎだったと思うが、駅員が「何時に着くか分かりませんよ」と言い、それを私が承諾したので中に入れてくれた。払い戻しと同様に、特急が大幅に遅延した場合はグリーン車を除き、座席の指定が無効になる、というルールもある。既に指定席を買っていた人は予定を中止したのか、指定席の車両の入口付近はガラ空きで、逆に自由席の車両の入り口付近に多くの人が並んでいた。もちろん私は座席の指定はないものの、指定席車両の入口に列をなした。

 通常、6時間あまりで博多駅にたどり着くのだが、予想通りに関ヶ原付近で何度も立ち往生し、10時間あまりを要して博多駅に着いたのは真夜中で、既に博多駅から移動する手段は絶たれていた。博多駅に近づくと社内アナウンスが流れた。既に在来線がないため、今夜は用意した車両の中でお休み下さい、という内容であった。指示されたホームに移動すると新幹線の車両が止まっていた。いつもは車庫に戻すものをホームに持ってきたようだ。ホームでは駅員より、アンパンと缶コーヒーが手渡された。皆さんも新聞やニュースで見たことがあると思うが、立ち往生した電車の中でパンを貰っている、まさにあの姿である。

 とりあえず、それで空腹を満たし、しばしの眠りに着いた。この車両やホームも朝は始発から稼動させるため、まだ始発には早い時刻に叩き起こされてしまう。それにしても、こんな未明にあれだけのアンパンをよく用意できたなあ、と感心した。きっと到着の大幅遅延が分かった時点で「アンパン手配」の指令が飛んだことだろう。