第331話 ■龍宮城へようこそ

 誰もその姿を見たことはない。当たり前だ、作り話なんだから。けど、まあ今回はそんな龍宮城について考えてみたい。まず思いつくのは浦島太郎の話であろう。「絵にも書けない美しさ」と言いながら、絵本にはちゃんと絵が載っていた。あまり知られていない話であるが、浦島太郎の話は玉手箱を開けて年を取って終わりではない。原作の「お伽草子」では、その後に彼は鶴になって、かなた遠く飛んで行って終わる。以前も書いたがこの話には大きな疑問が残る。もちろん、海の中で彼が生活できたことやその間にかなりの時間が経ってしまっていたこと。それに、龍宮城の存在自体も確かに疑問ではあるが、それ以上に私が疑問に思ったのは、「絶対に開けてはいけません」と言いながら、何故乙姫は太郎に玉手箱を渡したか?、ということである。

 龍宮城が出て来る話はもう1つある。「うみひこやまひこ」だ。弟の山彦が兄海彦の釣り針をなくしてしまい、それを探し求めて龍宮城にたどり着く。釣り針を取り戻すとともに彼は乙姫から青い玉と赤い玉をもらう(この展開がそもそものオリジナルかどうかは不明、未確認)。海彦が釣り針を返してもらっても、山彦を許さなかったときを想定し、洪水を起こし、こらしめる魔法の玉とその状態を元に戻す魔法の玉であった。結果、この兄弟は仲直りをするが、これを実話に当てはめると相当物騒である。そこには、兄を殺そうとした弟とそんなことをされてまでも弟を許す兄の姿がある。話の中では兄は悪者、弟が善者として描かれているが、冷静に考えれば逆である。

 さて、このように龍宮城が出て来る話は複数存在する(この他にもマイナーな話が存在する可能性は大きい)。はたしてこれらに存在する龍宮城は設定上、同じものなのだろうか?。出て来る乙姫は同じ人なのだろうか?。こんなことを考え付く人はあまりいないだろう。ついでに、乙姫は何故天女と同じような格好をしているのだろうか?。約30年前に保育園のお遊戯会で「うみひとやまひこ」を演じたときの写真を発見し、こんな疑問を思いついた。主役の横で額に魚の面を付け、膝立ちした格好でその写真にはおさまっている。