第338話 ■作りおき

 仕事で外出したときは駅でカレーを食べることが多い。東京駅や新橋駅の構内にある、JR経営のカレースタンドである(新橋駅のものはエレベータ工事のため現在はない)。時間がないときは助かる。値段もリーズナブルだし。オーダーはハンバーグカレーと決まっている。東京駅のものは値段も多少高いためか、ハンバーグも普通の大きさである。それに引き換え、新橋駅の場合は半分ぐらいの大きさで、まるでお弁当用のハンバーグのようである。まあ、安いから仕方がないか。

 かつての新橋駅のカレースタンドのメニューにはスパゲティーもあった。ただしこれはいただけない。私の後に入って来た人がスパゲティーをオーダーした。すると店のおばさんは冷蔵庫から袋に入った麺を取り出すと、それをレンジに入れ、チンしだした。本格的なパスタの店のように「それから麺を茹でろ」、とは言わないが、せめてこのようなことは客からは見えないところでやって頂きたい。

 ところで、こんな話はもっと身近にもあった。自宅での夕飯にほうれん草におひたしが出た。しばらくは何の疑いもなく食していたが、ある日その舞台裏を見てしまった。実は冷凍食品だったのだ。確かにわずかな量を準備するには便利であるのは確かだ。不覚にも味覚で冷凍食品であることを見抜けなかった。食卓に出てきたほうれん草が冷凍食品であったことよりもこっちの方が悔しかった。冷凍食品に、いったいどのくらいのバリエーションがあるのか分からないが、業務用までとなると相当な範囲にのぼることだろう。いや、それどころではない。あなたの今日の夕飯、さっきまで惣菜売場に並んでいたものかもしれないよ。その肉じゃがも。