第350話 ■テレビショッピング

 「たかたよ、たかた」。妻の声である。テレビを見ながら、私を起こそうと声を掛けて来た。夕べも夜更かしをして、もう朝も随分遅い時間だろうが、まだもうちょっと寝ていたい気がする(今日は平日だけど、お休み)。「EOSよ、EOS」。妻は「ジャパネットたかた」のテレビショッピングを私に見せようとしている。この「ジャパネットたかた」とは金利手数料なし(たかた負担)分割払い可を売りにした家電ディスカウント通販である。深夜枠の30分や昼間の番組と番組の間の五分程度で、どこかイントネーションのおかしな、出たがりと思しき社長と芸能人とが次々に商品を紹介していく構成である。

 テレビショッピングは大きく2つの系統に別れると思う。1つは前述のたかたの例の様に、普通に店で買える商品だけど、通販だから「安く」を前面に打ち出したもの。そしてもう1つは、洗剤や布団圧縮袋を例とした、普通の店では買えない、いわゆる便利ものタイプである。後者は外人の映像を吹き替えしたものも含まれる。後者はとにかく、デモをやる事が重要である。まるで実演販売だ。本当にそれ程すごいのかは分からないが、クレヨン、マジック、食べこぼし、油などがテレビではみるみるうちに綺麗になっていく。

 司会者の驚きはもちろんだが、会場の奥さん連中もお約束で感嘆の声をあげる。「いろんな汚れがこの1本でOKです」ときめた途端に、会場から拍手が起こる。「さてお値段ですが」。司会者が振ると、「今日はこの○○クリーナーを4本セットにして、7,800円で御奉仕いたします」(会場一斉に再度拍手。司会者驚いてみせる)。さっき、「この1本でOK」と言っただろう。何故4本セットなんだ?。こう思うのは、私だけではないはず。1本なら買ってみたい気もするが。