第361話 ■広告の品

 パリーグはダイエーホークスの優勝とあいなり、タイミング良く週末からの優勝記念セールとなった。昨年は初の優勝記念セールということで、近くのDマートの混雑は大変なものだった。おかげで今年は近寄る事も避けている。一部ではダイエーの入った大型ショッピングモール周辺での渋滞の知らせも届いている。広告には記念セールとして様々な売出品が掲載されているが、これに限らず、広告の品目当てでいざ行ってみるとあいにく売り切れだったりする。あるいは、広告の品目当てで行ったは良いが、広告の品があまりにも貧弱で、結果、隣に置いてあったそれよりもちょっと高い商品を買う羽目になったりもする。

 広告の品というのは所詮客寄せのためのオトリでしかない。マンションのチラシに書かれている値段も最低価格の一戸限りだったりする。それなのに、チラシの写真やモデルルームは最も高い部屋のものになっている事が多いようだ。車の広告にも車の写真の横に「オプション装着車」と小さく書かれている。以前、近くにマンションのモデルルームができて見に行った時の話。かろうじて手が届きそうな最も安い部屋の見積りを作成してもらって帰った。

 数日後そのモデルルームを訪ねると、あいにくその部屋は既に売れていた。営業マンはそれよりも2割ほど高い部屋を熱心に勧めるが、それでは買えない。「他にもっと安い部屋はないのか?」と聞くと営業マンは内部資料として、部屋の契約状況を示した紙を見せてくれた。確かに残っているのは高い部屋ばかりである。しかしそれ以上に気になったのは、最初に狙った最低価格の部屋の事であった。何とそこには私が見積りを作成してもらった日よりも前の日付が記されていた。既に売れてしまっていた部屋の見積りを平気で出して来る営業マンの姿に不信感を持ち、モデルルームをあとにした。