第373話 ■ビニールロッカー

 一時期すごく流行ったがために、その後急速に恥ずかしくなってしまうものがある。中には流行が繰り返すものもあるが、あなたのお父さんのそれこそフサフサのロン毛でベルボトムのジーンズなんか履いた30年ぐらい前の写真を発見したら、そりゃ笑うだろう。ハッ、ハッ、ハッ。母親のミニスカート写真も見たくないだろう。ファッションだけではない、当時は家中に今となっては笑える家財道具があふれていた。

 黒電話に何故かカバー。同様にティッシュの箱にも。ポットやトースター、炊飯ジャーには何故か花柄などのデザインが施されていた。もちろん、この場合のトースターはパンが飛び出すスタイルのものである。当時はそれがおしゃれだったに違いない。しかし、今あなたが遊びに行った友達の家でこんなものを見つけてしまったらどうする?。

 そして、当時の一人住まいの部屋や、自分の部屋にはビニールロッカーとカラーボックスという二大アイテムが存在した。カラーボックスは純然たるその当時のデザインのままの白い面縁取りがなされたものは減ったが、黒単色や木目調という形で市民権を獲得するに至っている。手頃な本棚や小物棚はほとんどこのバリエーションと言って良いだろう。しかし、ビニールロッカーの方は哀れである。今あれが部屋にあるとなると彼女を部屋に呼ぶにもためらいが生じるに違いない。クローゼットよりははるかに安価であるし、模様替えの際の移動も楽である。しかしながら、誰が格好悪いと言い出したのかは分からないが、その意見を真っ向から否定するのは難しい(やっぱり格好悪いしなあ)。

 だいたい世の中は時間とともに恥ずかしくなってしまうものが多すぎる。今売れてる芸能人も昔の姿を見ると(その当時も売れていたにしても)、髪型やファッションがやはり恥ずかしい。さらに、この間に消えてしまった芸能人なんか、ただ思い出しただけでも笑える。自分の昔の写真を見て恥ずかしく思えるのは、自分が成長した証拠なのかもしれない。もし、その日の秀コラムが面白くなくても、数年経って読んでみたらおもしろかもしれない。私は恥ずかしいかもしれないが。