第374話 ■理不尽の連鎖

 中学や高校の部活動に入ると新入部員は、まず玉拾いなどをやらされる。中学で花形スターであっても、ほとんどの場合、高校に入ったら自分よりへたくそな先輩の玉拾いから始めなければならない。物理的に場所や設備の面での理由により、多くの新入部員がそのような環境下に置かれることも多少あるかもしれないが、もっと多くの理由は「自分達もそうだった」から、というあまり正当性があるとは思えない、顧問教師や上級生の意識である。

 加えて、上級生と下級生ということで理不尽な要求も突きつけられる。「焼きそばパン、買って来い!」なんて。この場合は、やはり焼きそばパンであって欲しいし、許せてもコロッケパン。メロンパンでは雰囲気が出ない。中には上級生の感覚が麻痺して、「金、貸してくれ!」(なかなか返してくれない)とか、自分がいらなくなったもの(ラケットやシューズなど)を後輩に売りつけたりしてくる。彼らに罪の意識はほとんどない。「自分達も先輩にそうされていたから」。

 下級生にとってはたまったものではない。上級生もかつては先輩達の理不尽さに腹を立てていたはずだ。「自分が上級生になったら、あんなことはやめよう」と思ったに違いない。しかし、皮肉なことにそのそうな意志の強い人は、この理不尽に否定的であるがために、耐えられないのか、バカらしく思えたのか、途中で部活動をやめてしまうことが多い。一方、理不尽に耐えながら、「俺達も上級生になったら・・・」という者だけが残るため、この理不尽は連鎖し、中には「伝統」という間違った付加価値が付いて温存されることになる。

 これらは少なからず、会社組織(私が勤めている会社が、そうというわけではない。念のため)にも共通する部分がある。出世するにつれ、接待やらゴルフやらと本業はそっちのけで、一般社員にはうらやましい仕事に熱心になる人がいる。逆にそれは、普通に仕事がやらせてもらえなくなっている証拠だと思えたりするが。そして、仕事は部下にまわされ、部下の手柄を自分の手柄と吹聴するようになる。しかし、「いつか自分も出世したら」と、その手前に来ていた人にはやや苦しい御時勢である。リストラに経費節減。さて、理不尽の連鎖はいつ断ち切られることだろう。