第377話 ■中川君の御難

 最近、あまりテレビを見る時間がないが、テレビをいうメディアの特質を活かして大変なことが起きていることにようやく気が付いた。まず最初は長野県企画局長の名刺折り曲げ事件。「社長が部下に名刺を配るような会社は倒産する」と息巻いて、名刺を折り曲げるシーンがテレビで何度も流されていた。あの局長は確信犯なわけで、テレビカメラを前に「してやったり」とあのときは思ったに違いない。きっと県庁内に何人かの同士がいるに違いない。その仲間へのパフォーマンスだったような気がする。しかし、読みが浅はかすぎた。最後はしゅんとなって、謝罪や辞表、そして慰留とあまりにも格好悪かった。慰留して田中知事は寛大な人として評価されるのか?。いっそのこと辞めさせた方が県民としては溜飲が下がって支持率も上がったかもしれないと思う。あんな、企画局長に大事な税金を使ってもらいたくないという感情もあるだろうし。

 続いては、中川官房長官の辞任騒ぎ、数日前から更迭されるであろうことは新聞などでも伝えられていたが、最後にあんな切り札が用意されていたとは驚いた。しかし、残念なことにあのテープが流されたテレビを私は見ていない。その放送の深夜にインターネットの新聞のサイトで内容を読んだが、ちょっと気になる部分があった。明らかに前官房長官が「言わされている」と思える箇所がある。写真週刊誌でいろいろと叩かれていながらも、とぼけていたあの御仁が今回はあっけなく吹き飛んでしまった。発行部数と視聴者数、この格差と誰かが書いた文章ではなく、生の録音テープという客観性+信憑性を持つ、テレビならではなせる技である。

 ところで、あのテープはどうやって録音されたのだろうか?、と思うあなたへ。盗聴ということも有り得るかもしれない。しかし、会話に出て来る、「それはどこからの情報ですか?」と尋ねて、「警察筋からの情報」であることを答え(させられ)ている点を考えると、もっと単純かもしれない。「警察からの情報ですか?」と聞かずに、相手に「警察筋」と言わせているあたりが実に巧妙である。私は愛人が後々のことを考えて日常的に電話などを録音していたような気がする。愛人可愛さに掛けた電話で最後に裏切られるとは、中川君よりもこの女性が数段上だったわけだ。まるで峰不二子のようだ。