第382話 ■なつかしい車の話

 今はトヨタの某ミニバンに乗っているが、本当のところ、別に欲しい車がある。それは「ホンダS800」という車だ。若い人や車にあまり興味のない人には説明が難しいが、文字通り排気量は800cc。2シーターのオープンカーである。昭和40、1年の生産だから私と同じ年である。これではさすがに台数も少なく、たとえ見つかってもコンディションの良いものとなると相当な値段(300万円くらいかな?)のはずだ。それでいて、今時分の軽自動車の方がずっと良い走りをするとなると、何台か別の車を持つ身分でなければ買えるものではない。故障のことも考えておかねばならないだろうし。4人家族に2シーターのオープンカーが1台というのは無謀すぎる。

 別の車もありながら、そんな中古車に大枚をはたいたりできるような身分に、はたして私がたどり着けるかはさておき、時間が経てば経つほど良いコンディションのS800入手の可能性は失せていく。私がS800のオーナーとなるのはプラモデルかミニカーが精一杯だろう。

 ところで、ミニカーというと私はトヨタ2000GTを思い出す。最初に親に買ってもらったミニカーがトヨタ2000GTだったから。そのときはトヨタ2000GTという名前は知らなかったが、そういう名前であると知ったときに、ちょっと驚いた。「この車、名前がない」。トヨタ2000GTは確かにトヨタ2000GTであるが、普通は「日産スカイライン2000GT」のように車名というものがありそうなもんだ。苗字だけで名前がないような話だ。けど、トヨタには昔これ以外にも車名がないような車があった。「トヨタ1600GT」。名前からすると2000GTの弟分のようだが、こちらはベース車がコロナ。ちょっと悲しい。