第394話 ■判断と選択

 人生は判断と選択の繰り返しである。就職先や結婚相手選びは言うに及ばず、昼食を何にするか、やるべき仕事の順番をどうするかにおいても判断と選択が必要とされる。もちろん、こんなものの判断は些細なことで、その人の人生に影響を及ぼすとは到底思えないが、その可能性が皆無であるとは誰にも断言することはできない。

 ところで、自分にとっては些細な判断や選択が他人の人生に影響を与えることがしばしばある。組織で責任ある地位に進むにつれて、あるいは人の親となった途端に、自分以外の分の判断も行わなくてはならなくなる。我が子や部下の分の判断となると、自分への影響もあるので、それなりに気を遣う。その一方で自分のことを他人に決めてもらおうという人がいる。占いに頼るのがそうである。

 また、身のまわりの全ての事象を「運命」と考える人がいる。人生は必然により決定されているという考えである。結構これは気楽かもしれないが、自分の人生なんだからもっと主体的に決断すべきであろう。これは占いに頼る人にも言える。人生に必然などありはしない。実のところ、「運命」というものは存在しない。人々が「運命」と呼んでいるものは、偶然の統合体として存在する現実の姿に他ならない。人生とはそのときどきの判断と選択の積み重ねでできているわけで、到底人任せになどにしてはいられない。