第489話 ■真夜中の誘惑

 その誘惑は丑三つ時の真夜中に、電波に乗ってやって来た。溜りに溜まった、テレビ番組を録画したビデオを片付けるには、あるものは諦め、その残りをただひたすら見るしかない。この状態が続いて夜も更けて来ると、気分が不思議とハイになってくる。テープを入れ替える途中に画面に現れた、放送中の名も知らぬ洋画に見入ってしまったり、テレビショッピングの派手なデモンストレーションにうなずいてみたり(まではしないか)。

 そして、今回はその誘惑にまんまと引っ掛かってしまった。テレビショッピングで紹介されていた腕時計が欲しくなってしまった。ギミックが面白いクオーツの腕時計である。早速、買うための算段に入っている。どんなものかの詳細は入手できてからレポートすることにしよう。これでノートパソコンの購入プランは吹き飛んでしまった。

 今度腕時計を買うときは「ブルガリアルミニウム」と決めていた(第113話「『欲しい』と『買いたい』」参照)にもかかわらず、ダークホースの登場でその順位は一転してしまった。結婚相手や就職先というのも意外とこんな感じの急に現れた予想外の候補に落ち着いたりする。人生を感じる夜でもあった。

(秀)