第519話 ■ベイビー・カム・バック

 高校の時には、深夜にラジオを聴きながら勉強をするのが日課であった。こんな人、結構多いのではないだろうか。勉強はさておき、ラジオだけを楽しんだ人も含めて。深夜1時からはオールナイトニッポンというのがお決まりであるが、それまでの時間は「青春キャンパス」や地元のAMローカル局のオリジナル番組を聞いていた。もちろん、全国ネットの番組も地方のローカル局を経由して聞いていた。

 その地方ローカル番組の中で私がもっとも好きだったのは、福岡の局がやっていた「パオーン!ぼくらラジオ異星人」という番組であった。おぼろげな私の記憶では新聞のラジオ番組欄には「パオーン!」と表記されているだけで、番組名の文字としての表記がこれであっているかどうか今となっては分からないが、ラジオでコールされる番組名はこうであった。男性局アナが日替わりでパーソナリティを務める、中高生(主に高校生)向けの番組であった。番組中に福岡の有名高校の話題が出るなど、ご当地色の大変濃い番組だった。番組の中身については機会があったら改めて書くとしよう。

 番組の最後はしんみりとパーソナリティがリスナーからの手紙を次々と読むコーナーであった。そのときのバックミュージックが「ベイビー・カム・バック」という曲だった。これは’78年にプレイヤーという米国のバンドが出したヒット曲である(この番組で流れていたのは’82、83年頃)。サビの部分の「ベイビー・カム・バック」という部分には聞き覚えのある人も多いだろう。

 コーナーに寄せられたリスナーからの手紙のほとんどは恋の告白や片思いの様子を綴ったものだった。オールナイトニッポンなどにはない、地方ローカル番組ならではこその、もう1つのメディアとしてのラジオの楽しみがそこにはあった。別に自分がこのコーナーに手紙を出したり、このコーナーで自分へのメッセージが読まれたわけではないが、当時同じような悩みを抱える同じ年頃のリスナーとして、耳を傾けていたものだ。また、その雰囲気に良く合った曲だった。だから今でもこの曲を耳にすると、あの頃を思い出して、胸がキュンとなってしまう。

(秀)