第53話 ■夏の歌

 KinkiKidsの「フラワー」という曲のイントロは、うしろゆびさされ組の「バナナの涙」に似ている。トロピカルな音となると、80年代の後半に流行った。あの頃は夏らしい曲も多かったなあ、なんて思えて来る。

 夏を感じる1曲となると、自分の場合、山下達郎の「SPARKLE」という曲である。山下達郎はシングルとしては「RIDE ON TIME」でメジャーとなるが、アルバム的にはその後の「FOR YOU」からだと思う。B面(その当時はレコードだから)1曲目の 「LOVELAND ,ISLAND」とA面1曲目の前出の「SPARKLE」は続けて2年間サントリービールのCMソングとして流れ、山下達郎を夏男と決定付けた作品が納められたアルバムである。ただ面白いことにこのアルバムは冬にリリースされている。その次のアルバムは「MELODIES」というタイトルで、その翌々年の6月にリリースされたが、最後にはあの名曲「クリスマスイブ」が納められている。

 一方、夏と言えばサザンという人も多いだろう。江ノ島や湘南というキーワードが浮かぶ。夏が来る度に、学生の頃、車で海に出かけたこと、そしてその時にかかっていたテープの曲というのが思い出される。泉麻人のコラムにはこの手の話がよく出て来る。自分の場合、年代的にはアルバムのタイトルは「KAMAKURA」か(このアルバムは’85年秋にリリースされている)?。しかし、江ノ島やドライブといったキーワードはその当時江ノ島とは遥か離れた大学に通っていたし、車で海に行った記憶もない自分にはあまり現実感のない話であった。「やはり江ノ島を目の当たりにして聴くサザンは良いだろうなあ」、と思ったのはだいぶ時間が経って、初めて実際に江ノ島を見たときだった。頭の中ではサザンの「海」のメロディが流れていた。田舎でそのまま暮らしていたら、そんなことなど思いもしなかっただろう。その当時激しい渋滞の車の中で聴いて、苦々しい思い出と共に曲を記憶している人もいるだろう。茅ヶ崎海水浴場が今年から、「サザンビーチ茅ヶ崎」に呼称変更されたそうだ。