第71話 ■マック

 マックと言ってもMacintoshではない、マクドナルドの方である。今はそれほどでもないが、幕張に通勤していた時は会社と家の両最寄り駅にマクドナルドがあり、3日と置かずに通っていた。キャンペーン情報にもめっぽう詳しく、会社でよく「今は何が安いの?」と聞かれたりした。

 私がマクドナルドを好きな理由は従業員の教育が徹底している点である。業界最大手でネームバリューもあるため、求人においても有利である。他のチェーンでは仕事がテキパキといかない店員やケバくて飲食店には不似合いな店員などを目撃したことがある。決まってそういう所は店の掃除がいい加減であったり、奥で未成年者がたばこを吹かしていたりする。

 私とマクドナルドの出会いは15才のときだった。まだ地元に店はなかった。バスで久留米市に出掛けたついでに初めて立ち寄った。CMでは見ていたゴマ付きパンズのビッグマックの現物を手に一種の達成感を感じた。マックは子供の取り込みに非常に熱心である。「人の食習慣は12才までに形成される。12才までに口にしたものを一生食べ続ける」との説を藤田社長が雑誌で述べていた。子供に呼びかけ、親を連れて来させようというレベルの作戦ではなく、一生顧客にしてしまおうという恐るべき作戦なのである。私は12才に間に合わなかったが彼らの術中にずっぽりはまってしまったようだ。

 最近残念に思うことは新製品の開発にあまり積極的でないことだ。順次キャンペーンをはって限定商品の安売りをしているが、あれは1年サイクルで同じものの繰り返しでしかない。かつての「マックチョオ(中華ランチのパッケージで2種類あった)」や「何故わざわざマックでレトルトのカレーを食べなきゃいけないんだ??」という疑問を湧かせた「マックカレー」にも復活して欲しい。

 マックは非常に研究熱心で、科学的な経営を行う会社である。その傾向は商品開発にも見られ、「マックシェィク」のあの飲みにくさは母乳の出てくる速度らしい。ストローの口径もそれ(乳首)にあわせてあるそうだ(硬いけど)。だからと言って、ストローを舌で転がして飲んではいけない。