第758話 ■ゴールデンボウル

 このドラマには「井の頭公園駅」が登場してくる。主人公の芥川周(金城武)と佐倉瞳(黒木瞳)はここを最寄り駅とするところに住んでいて、「ゴールデンボウル」もその周辺に存在する設定となっているのだろう。多分、前回のボウリングブームの時(30年程前)に建設され、ブーム後も細々と存在し続け、老朽化のため地上げ屋による立ち退きを求められている、そんなボウリング場がこのドラマの舞台となっている。

 芥川の唯一の趣味はボウリング。プロ並の腕前で、足繁くゴールデンボウルに通っている。決まって使用するロッカーナンバーは「13」。しかしこのロッカーを愛用するもう一人がいた。「13」、それは「ヒトミ」。芥川がこのロッカーにこだわるのは死別した恋人の名前が「ヒトミ」であったため、そして昼間このロッカーを使用していた瞳も自分の名前ゆえ、それにこだわっていた。偶然時間が重なり、このロッカーをめぐり二人は出会った。もちろん穏やかではなく、ケンカとして。

 メインストーリーは立ち退きを求める地上げ屋とのボウリング勝負。ボウリング場の社長(大滝秀治)が毎回地上げ屋の口車に乗ってのこと。地上げ屋がし向けた選手と芥川&瞳(最初は瀬川瑛子演じるレッスンプロとのペアだったが途中交代)ペアが勝負に負ければ、ボウリング場は閉鎖されてしまう。いつも微妙なゲーム展開だが、最終フレームで芥川はボウリング場の社長からもらったまさしく「ゴールデンボウル」を投げ、ゲームを決める。期待通りの展開でしかないが、見ていて胸がすく思いが楽しめる。

 伏線は瞳の夫婦仲。夫(篠田三郎)の愛人と名乗る女性から頻繁に瞳宛の電話が掛かってくる。その悩みを芥川に洩らしながら、二人の中は急接近。それでも、芥川をその愛人に会いに行かせるなどのしたたかさを瞳は忘れていない。瞳は芥川に言われた「浮気しているの?」と聞いて軽く釘を指すのが良い、という指示を飛び越え、「私達別れましょう」と夫に告げた。さて、この結末はどうなるか?。

 随分彼らはボウリングの練習をしたことだろう。あるいは期待通りにピンが倒れない時はNGとなって、何度も投げ直しているのだろう。いつも通りに地上げ屋との勝負に勝ち続けるのは良いのだが、老朽化し、一旦は閉鎖が決まったこのボウリング場。いずれは幕を閉じるのか?。(老齢の)大滝秀治がカギだと思うのだが。

(秀)