第825話 ■料理の鉄人

 私の記憶が確かならば、この番組の第一回放送分のテーマは「鮭」。そしてそのときの鉄人はフレンチの初代鉄人、石鍋裕氏であったはず。そして栄えある初代挑戦者は周富徳の愛弟子、丸山剛氏であった。ちなみに鉄人たちがこの番組を機に社会に広く認知され始めたのに対し、周富徳はテレビ東京の「浅草橋ヤング洋品店」の料理水戸黄門のコーナーで既にテレビ進出を果たし、弟子の丸山に対しても、「あの周富徳の愛弟子」という冠が使用されても世間的には通用する位置にいた。

 かと言って、この最初の放送に周富徳が挑戦者の師匠として姿を現すわけでなく、挑戦者丸山は無残にも初代挑戦者として番組のスタイルを理解できずに無残な負け方をしてしまう。テーマ「鮭」に対し、丸山が作ったのは「鮭チャーハン」一品のみ。番組の中では周富徳直伝と盛んに番組サイドはアナウンスしていたが、事実はどうか怪しい。審査の際に「鮭はどこ?、鮭の味がしない」などと酷評されてしまう。おまけにこれだけであるため、時間配分も悪く、そのチャーハンは冷めてしまっていたようだ。これに対し鉄人は三品を作り、圧勝。このとき、三品、四品をコースとして作ることが番組でのスタイルとして確率した。

 最初の放送から4、5回ぐらいまでは、前半に挑戦者の予選を行い、その勝者が鉄人への挑戦者となって、キッチンスタジアムの門戸が開かれるという設定だった。その予選というのは大根のかつらむき、を最も長くできた人が勝ち、といった感じのものだった(ちょっと記憶が危ういが)。このときの挑戦者は料理人ではあるものの、鉄人と伍するのには名実ともに甚だ見劣りしていた。また、このスタイルでは挑戦者の希望に応じて、三人の鉄人を待機させておかなければならない可能性がある(まあ、誰が挑戦者となろうと鉄人はあらかじめ調整されている可能性は高いが)。その後、挑戦者は鹿賀丈史が名うての料理人を招聘し、スタジアムで鉄人と戦わせるようになった。以上、私の記憶が確かなうちに書き記しておく。

(秀)