第2013話 ■北方領土返還交渉を俯瞰する

 世の中は正しいとか、正しくないとかで判断できないことが実に多い。妙に正義感や正当性を振りかざして臨んでも、それだけで相手の納得を得られるとは限らない。国と国の交渉事においてはまさにその領域だ。

 「北方領土」という呼称をやめろとか、その島々が戦後処理でソ連(当時)の領土となったことを認めろ、と言ってくる。一方で、安倍総理は、主権に拘るから、一層相手の感情を逆なでする。これをどちらが正しいかということを過去の記録などに照らして説得したところで、あまり意味がないように思える。

 こういう問題は相手の立場になって想像してみるとわかりやすい。北方領土(のうち2島でも)を返還したくない、もっと言うと返還したら困る理由を考えてみれば良い。人が住めるかどうかの興味関心ではない。もし、北方領土を返還し、さらにそこに日本の主権を認めてしまえば、そこに軍事基地、もっと言うと米軍基地が置かれる可能性が生じる。だから返したくない、返すわけにはいかない。もし返しても、日本の主権は認めたくないために、まずは現時点でのロシアの主権を認めるのが交渉の前提と要求することになる

 テレビのワイドショー的な番組の説明では、両国の言い分などの違いを比較することで解説しているが、そんなことでは交渉の実情が分かるはずない。平和条約の締結の必要性などからは何も見えてこない。トランプ大統領の間は、特に難しいのではないかと私は思っている。

(秀)