間近に迫った夏休みが仕事のせいで取れなくなった。予定していた旅行もドタキャン。挙句の果てには「私と仕事とどっちが大事なの?」、なんて言われる。なーに、心配には及ばない。私事ではなく、ドラマの話だ。ドラマ「元カレ」での話。内山理名が堂本剛にこんな台詞を吐く。
それにしても安っぽい台詞だ。「私と仕事とどっちが大事なの?」って。なぜ安っぽい台詞か?。それは誰が言ってもそれとなく形になってしまう台詞だからだ。例えそれが鈴木京香であれ、深津絵里であれ、吉永小百合でさえもそうだ。このドラマを見ていない人でも内山理名がどんな具合にこの台詞を吐いたかは容易に想像できるはず。だから安っぽいのだ。彼女は当て馬女優街道まっしぐらといったところだ。
一方、男の方は「君も仕事も両方大事だよ」、なんていい加減な返事をしてしまう。何も解決しないどころか、二人の間はますます険悪になる。ところでこの「君も仕事も両方大事だよ」という台詞も同様の理由で安っぽい。堂本剛でも、織田裕二でも、江守徹でも、はたまた高倉健でもそれとなく形になってしまう感じが容易に想像できる。
「私と仕事とどっちが大事なの?」という台詞はやはり手におえない。どんな答えを返そうとも相手の満足を得るのは難しい。媚びたところでドツボにはまるだけだ。まさに破壊の一言。安っぽい台詞は安っぽいドラマになりがちだ。ここで私が脚本家なら「そんなことを言い出すお前なんか嫌いだ!」と返事をさせてやりたい。ドラマの転がり方が分からなくなってしまい、「君も仕事も両方大事だよ」なんて台詞より百倍は面白いと思うのだが。もちろん、日常では言えないもんだ。
(秀)