私が中高生の頃(25年ほど前になる)に、地元のNHK FMの音楽番組を土曜日の午後は聴いていた。「FMリクエストアワー」という番組名で、私たちはこれを略して「Fリク」と呼んでいた。地元の局のアナウンサーと素人のアシスタントによる番組で、レコードをそうやすやすと買えない頃に、曲を録音するには結構重要な音源だった。
何度かこの番組のスタジオに見学に行ったことがある。公開放送というやつだ。土曜日の午後とあって、正面玄関は閉まっているが、通用口から入り、番組の名前を言うと、無愛想な係員が返事もせず、案内してくれる。確かそこは第2スタジオだったと思うが、20坪ぐらいの場所で、パーソナリティーが向かい合わせに座って、上からマイクが下がっている。観客は整然と並べられたパイプ椅子にポツポツと10人くらい座っている。
パーソナリティーの横にはマイクのスイッチ(カフというらしい)があって、曲を紹介すると、マイクの音声を切ってスタジオ内にちょっとした緊張の緩和が走る。「いつもラジオで喋っている人がどんな人か?」という好奇心から、「今この音が電波に乗って放送されてるんだ」、という感動が起きた。
実はこの番組に私は大学生のとき、出演したことがある。大学の学園祭の宣伝で時間をもらった。5分という約束だったが、喋りだすと時間の感覚が麻痺してしまうため、後から気が付くと15分ほど喋ってしまっていた。今でもプレゼンは時間が押してしまうことが多い。後から録音した自分の声を聞かされたが、「変な声!」と思った。
この番組は同名タイトルで、同じ時間帯に各局の制作で放送されていたようで、私が上京した直後に聞いた東京での番組のパーソナリティーは森高千里だった。都会を感じた。
(秀)