技術進歩と価格、それにタイミングの間で、はかなくも消えていく製品の話。リアプロジェクションテレビ。私は今の液晶テレビを買うちょっと前、今から約2年ちょっと前に、本気でリアプロジェクションテレビを買おうと思って、ネットで価格を調べたり、量販店に足繁く通ったりもした。リアプロジェクションテレビを検討していた理由は価格だ。当時の液晶テレビの同サイズのものと比べて、価格差が10万円もあり、安かった。低予算で大画面。私にとって、この答がリアプロジェクションテレビだった。
ところが結局、液晶テレビを買った。リアプロテレビは視野角が非常に狭く、寝転がって腕枕で見ると正しい視野角から外れてしまうことが分かったからだ。量販店のリアプロテレビの前で寝転がってはみなかったが、何度も膝を折って屈んでみたりして、確かに画面が暗くなる。そして結局これを諦めることにした。また、使用していくには定期的に中のランプを交換せねばならず、それがそこそこ、数万円の支出になることも、再考のきっかけとなった。
リアプロテレビが日本に上陸するにあたって、北米では人気があるとの情報が流れていた。しかし、これは住宅事情によるもので、構造上リアプロテレビは奥行きが出っ張ってしまう。日本の狭い住宅にはやはり厳しいと言わざるを得ない。それでも、50インチ以上に大画面となると、それなりに価格メリットでリアプロテレビの存在意義は日本でも見出すことができた。1年位前の話だろうか。
薄型大画面テレビの低価格化は私が思ったよりも速いテンポで進行している。私が買ったときに比べると、同じ画面サイズでも4割は安い。しかも高性能。ここまでくると、かつてのリアプロテレビよりも安い。こうなると、ほとんどの人は薄型テレビを選び、リアプロテレビは量産効果も出ず、やがて量販店の店頭から姿を消していった。そして、いくつかのメーカーはリアプロテレビから撤退した。
今も60インチクラスであれば、それなりに薄型テレビに比べて価格メリットがあるが、それ程のテレビを置ける家の人が価格差を気にしてリアプロテレビを選ぶのか?、という矛盾も存在する。個人的には、シアタールームを作るのなら、リアプロテレビを選ぶのだが、子どもたちが独立して部屋に余裕が出てくる頃には、リアプロテレビが市場から既に姿を消してしまっているかも知れない。皮肉なことだ。
(秀)